星のこだま

天体撮影を中心につぶやきます。

おうし座 超新星残骸 Sh2-240 (Simeis147) に挑戦

昨晩は、難物といわれる、おうし座の超新星残骸Sh2-240に挑戦してみました。
かなり淡い対象なので長時間露光が必要ですが、この対象は、この時期がいちばん良い時間帯に長く天頂付近で撮影可能であり、子午線越えの画像コンポジットができるようになったことなどから撮影してみることにしました。

f:id:star-echo:20190112153322j:plain
2019/1/11-12撮影 おうし座 超新星残骸 Sh2-240 (Simeis147)
Astro6D(約-8.0~-10.0℃冷却) + NewFD 300mmF2.8L + Astro Duo ナローバンドフィルター
SXP赤道儀 + M-GENにてオートガイド(ディザリングあり) ISO1600 180sec × 75 3時間45分露光

なるべく長く露出時間を稼ぎたかったので、いつもの撮影地に19時過ぎには機材のセッティングをしました。しかし、初めての対象でとても淡いので、導入と構図調整にかなり手間取りました。ベテランの方々が撮影された画像を参考におうし座β星エルナトの位置を調整しながら構図を決めました。結局、機材設置から撮影開始までに1時間半近くかかってしまい、撮影開始は20時半ごろでした。途中、子午線反転時にも構図の調整などに30分くらいかかってしまったので、翌1時半ごろまでで合計3時間45分ほどの撮影時間でした。
画像処理に関しては、今回もDeepSkyStackerが、精度よく反転処理も含めてコンポジットしてくれました。フラット補正もある程度うまくいってくれたので、R・Gの微調整とわずかなカブリ調整で背景が落ち着いてくれました。やはり、天頂付近での撮影だと背景のムラは少なくて済むようです。そして、なんといってもAstro Duo ナローバンドフィルターが威力を発揮してくれたと感じます。セミナロー~ナローなので、透過光域が狭く、暗いですが、長時間露光をするとシャープでコントラストが高くなるようです。長時間露光が必要ですが、このような淡くて微細な構造を持った対象に向いているフィルターなのかもしれません。また、F2.8の明るい光学系も威力を発揮してくれました。

 

f:id:star-echo:20190112155504j:plain
コンポジット・フラット補正して、レベル調整した直後の画像です。とても淡いですが、背景ムラが少なかったおかげでかなり強調処理できました。ディザリングと子午線反転の影響もありますが、トリミング量も少なくて済んだと感じています。

正直なところ、光害のひどいいつもの撮影場所でSh2-240の撮影をすることはちょっと無謀だと考えていました。しかしながら、強力なフィルターと明るい光学系、良好な天体の位置、多数枚のコンポジットなどによってある程度、写し出すことができました。


子午線ごえの画像コンポジットなど

1月3日20時過ぎから4日未明まで新年初の天体撮影に行きました。遠征ではなく、近所のいつもの撮影場所です。
最初、オリオン座のリゲルが子午線をまたぐまでの間、魔女の横顔星雲IC2118を撮影しました。次にクリスマスツリー星団・コーン星雲NGC2264を撮影しました。こちらは、子午線を越えるまで待とうかと思いましたが、時間があったので撮影を始めてしまいました。子午線を越えた後も赤道儀を反転させて撮影を継続してみました。次の目標のしぶんぎ座流星群の撮影まで時間があったので、結果的にかなりの枚数が撮れました。最後に、しぶんぎ座流星群の撮影と明け方の東の空を撮影しました。

まずは、魔女の横顔星雲IC2118です。

f:id:star-echo:20190106114211j:plain
2019/1/3撮影 魔女の横顔星雲IC2118
Astro6D(約-10.0℃冷却) + NewFD 300mmF2.8L + Astro Duo ナローバンドフィルター
SXP赤道儀 + M-GENにてオートガイド(ディザリングあり) ISO1600 180sec × 27 81min

やはりかなり淡いですね。フラット補正をして、かなり強調して何とかあぶりだしました。全体的に荒れた画像になってしまいました。もっと露光時間が必要なようです。

次に、クリスマスツリー星団・コーン星雲NGC2264です。まずは、子午線を越えてからの画像のみ90分露光のものです。

f:id:star-echo:20190106115032j:plain
2019/1/4撮影 クリスマスツリー星団・コーン星雲NGC2264
Astro6D(約-10.0℃冷却) + NewFD 300mmF2.8L + Astro Duo ナローバンドフィルター
SXP赤道儀 + M-GENにてオートガイド(ディザリングあり) ISO1600 180sec × 30 90min

子午線を越える前と越えた後、構図が少しずれてしまったものなどもすべて合成したものです。171分露光になります。

f:id:star-echo:20190106115821j:plain
2019/1/3-4撮影 クリスマスツリー星団・コーン星雲NGC2264
Astro6D(約-10.0℃冷却) + NewFD 300mmF2.8L + Astro Duo ナローバンドフィルター
SXP赤道儀 + M-GENにてオートガイド(ディザリングあり) ISO1600 180sec × 57 171min

f:id:star-echo:20190106120155j:plain
一番左が子午線越え後90分合成(30枚)、真ん中が子午線を越えてから構図がずれてしまったものを含んだ126分合成(42枚)、一番右が子午線前後をすべて171分(57枚)合成したものです。比較のため、レベル調整だけしたものです。ディザリングの影響もありますが、子午線越えによってかなり構図がずれています。画像処理の過程でトリミングすることになります。

実は、これまで子午線越え撮影は避けてきました。構図合わせや画像処理が面倒(コンポジットの方法がよくわからなかった)だったからです。
以下は、DeepSkyStackerのコンポジット画面の一部です。

f:id:star-echo:20190106121054j:plain
子午線越えで反転した画像も含めて一括して処理してくれました。回転は、Angle -179.6°とほぼ180°付近を示しています。以前からこのソフトの位置合わせ精度の良さは感じていましたが、反転処理まで精度よく行ってくれたのは驚きでした。

90分(左)と171分(右)の比較です。

f:id:star-echo:20190106121540j:plain
やはり、合成枚数・露光時間が多いほうが、滑らかで淡い部分まで描出できているようです。しかしながら、多数枚合成・長時間露光は、時間経過に伴う背景光度やカブリの変化のため背景ムラが目立ってきてしまうようです。こういう難しさにも初めて気づきました。

しぶんぎ座流星群です。流星が写っていた画像10枚を比較明合成したものです。流星は、思ったより少なかったようです。

f:id:star-echo:20190106122440j:plain
2019/1/4未明撮影 しぶんぎ座流星群 放射点付近
無改造6D + タムロンSP15-30mm F2.8(15mm 開放)
SXP赤道儀にてノータッチガイド ISO400 30sec × 10

最後に、明け方の東の空です。

f:id:star-echo:20190106122654j:plain
2019/1/4明け方の東の空
Astro6D + EF24-70mm F4L(約45mm 開放) + STC Astro Duoナローバンドフィルター
SXP赤道儀にてノータッチガイド ISO200 3sec JPEG一枚撮り

金星がとても明るく輝いていました。朝焼けも美しかったです。細い月も印象的です。ものすごく寒いのに夏のさそり座アンタレスが見えて、なにか変な気分でした。

以上、本年初の天体撮影も色々と盛りだくさんで有意義な撮影でした。

広角レンズでの天体撮影

明けましておめでとうございます。
年末年始は、かけあしであっという間に過ぎてしまいましたが、天体撮影をする時間も少し取れました。これまであまり行うことのなかった広角レンズでの撮影も試みてみました。
冷却改造6Dにおける広角レンズでのピント位置のズレなど気づくことがいくつかありました。

f:id:star-echo:20190105191430j:plain
2018/12/30撮影 オリオン座~いっかくじゅう座付近
Astro6D + EF24-70mm F4L(約45mm 開放) + STC Astro Duoナローバンドフィルター
K-ASTEC GF-50にてノータッチガイド ISO1600 180sec × 21合成

当初は、タムロンSP15-30mm F2.8で撮影する予定でした。しかし、焦点距離15mmにてピント合わせをしようとしてもどうしても合いません。前回トライした時のようなレンズの結露もありません。30mm付近までズームするといくらかマシになりますが、合焦しているとはいえません。ピント位置は、∞側いっぱいになっていました。どうやら、私の冷却改造6Dは、あまり広角だとピントが合わないようです。そこで、EF24-70mm F4Lに変更してみました。ピント位置は、∞側いっぱいにして24mm端から少しずつ70mm端にズームしていってピントの来る位置を探りました。おおよそ45mm付近でほぼ最良に合焦しました。光害カットフィルターの影響かと思って、はずしてみましたがあまり変化はなかったので、やはり無改造カメラとはピントが来る範囲が変わってしまっているようです。広角レンズは、IR改造KissX5の頃に使用して以来久しぶりでした。当時はきちんとピントが来ていたのですが、Astro6Dでは気を付けなくてはいけないようです。
画像処理に関しては、はじめフラット補正なしでコンポジットしてみたのですが、周辺減光やカブリが激しく、ステライメージの周辺減光補正ツールではうまく補正できませんでした。そこで、いつも使用しているELフラットフレーム撮影ツールでフラット画像を撮ってみることにしました。広角レンズでフードも切り込みのあるタイプなので、うまくいかないかと思いましたが、部屋を真っ暗にして可能な限り迷光の侵入がないようにして撮影したら何とか使えそうなフラット画像が取得できました。

f:id:star-echo:20190105194613j:plain
レベル調整して強調したものです。このような比較的素直なパターンになってくれました。このフラット画像を使用してフラット補正をしてコンポジットとしたところ、どうにか画像処理できるようになりました。それでも、Duo NBフィルターの影響で、Rの周辺減光が大きくずれていたり、カラーバランス調整に苦戦したりと色々大変でした。
しかしながら、光害地でも広角レンズでの撮影ができたことは大きな収穫でした。久しぶりにポタ赤のK-ASTEC GF-50も使用できました。

次は、ノーマル6Dでの広角撮影です。年が明けてから撮影を試みた、しぶんぎ座流星群です。

f:id:star-echo:20190105200229j:plain
2019/1/4未明撮影 しぶんぎ座流星群 放射点付近
無改造6D + タムロンSP15-30mm F2.8(15mm 開放)
SXP赤道儀にてノータッチガイド ISO400 30sec × 10

1月4日4時~5時くらいまでおよそ120枚ほど撮影して、流星が写っていた10枚を比較明合成したものです。期待したより流星は少なかったようです。
こちらは、無改造6Dなので普通にピントが合いました。ただ、光害カットフィルターなしなので、かなりカブリがひどかったです。また、出目金レンズなのでフラット画像も前述のような方法で取得できません。どうしても周辺減光やリング状のムラが出てしまいます。

以上、広角レンズでの天体撮影でした。画像処理も含めていつもの望遠レンズや望遠鏡での撮影とはちがった難しさがあると感じました。しかしながら、強力な光害カットフィルターのおかげでなんとか光害地でも広角撮影が可能なことがわかりました。ポタ赤の設置も手軽でよいので、また撮影してみたいと思います。

2018年、今年の天体撮影を振り返って

今年も残すところわずかとなりました。夏以降、天候に恵まれなかったため、あまり天体撮影はできませんでしたが、今年の活動をちょっと振り返ってみたいと思います。ようやく、リンクの埋め込み方も学習したので、ところどころリンクを貼らせてていただきます。ブログの目次のような内容になってしまいましたが、ご興味がございましたらリンク先も見ていただければと思います。
テーマとしては大きく二つに分けると、「新しい機材の導入」と「光害への対応」になります。また、ブログの開設や惑星拡大撮影など、初めての試みも多かったように思います。

 

●新しい機材の導入

  1. 冷却CCDから冷却CMOS
    まず最初の大きな機材変更は、この冷却CCDから冷却CMOSに入れ替えたことでした。ここから色々とはじまりました。
    長年使用してきたAtik383L+*1 *2とAtik314L+*2を手放して、ZWOのASI1600MM ProとASI178MC-Coolを導入しました。赤い缶詰のようなZWOの冷却CMOSは、コストパフォーマンスが高く使用されている方も多いようで、ネットなどでもよく見かけるようになりました。このカメラの導入によって、かなり撮影方法なども変わりました。
    ASI1600MM Proの方は、カラーフィルターと組み合わせてのRGB合成*3やナローバンドフィルターでの撮影*4、ASI178MC-Coolの方は、ワンショットのカラーカメラとして主にSharpCapのLive Stack撮影*4 *5や惑星の動画撮影*6 *7を行いました。まだGainの設定など課題も多いですが、これからの撮影の主力になりそうです。
  2. シュミットカセグレンC5鏡筒と周辺像の改良
    火星の接近に伴い導入しました。もともとは、惑星の拡大撮影*1 *2の目的で購入しましたが、DSOの撮影もしてみたくなってしまいました。結果として、ガイドカメラの同架や周辺像の改良などの沼にはまっていくことになりました*3。周辺像の改良は、ネットで先人達のお知恵を借りてのコマコレクターとクローズアップレンズによる像質改善でしたが、最初は思うような結果が得られませんでした*4。最終的には、撮像センサーまでの距離調整にたどり着いたことによってそれなりの結果を得ることができました*5 *6。次は、春の系外銀河などの撮影でまた試してみたいと思っています。
  3. ZWO ASIAIR *1 *2
    このASIAIRの登場は、撮影環境を大きく変えることになりました。スマホを使用してあれだけの処理を行えることには本当に驚きました。特にPlate Solve機能は秀逸で、アライメントや導入、構図調整に大きな威力を発揮してくれました。これまで今ひとつ使い切れていなかった自動導入改造AP赤道儀がよみがえったように思います。軽量で手軽な撮影方法として、今後の活躍が期待できます。
  4. 電源の小型・軽量化 *1 *2
    電源も見直しました。これまでは、12V電源といえば鉛シールバッテリーで、リチウムイオン電池のモバイルバッテリーは5Vで使用することがほとんどでした。しかしながら、リチウムイオン電池の高容量化・小型化などで12V電源も余裕で取れるようになってきました。撮影機材の小型・軽量化とも合わせてフットワークの改善に寄与してくれたと感じます。また、ポータブルの太陽光パネルでの充電も試みてみました。こちらはまだ十分に実用レベルとはいいがたいですが、夏場の日差しが強い時期には、キャンプなどで活躍してくれそうです。

●光害への対応

  1. 冷却CMOSカメラによるLive Stack撮影 *1 *2
    冷却CMOSカメラを導入したことによって、このLive Stack撮影が可能となりました。数十秒~1分程度の短い露出で大量に撮影してリアルタイムにコンポジットするため、赤道儀の追尾精度がそれほど要求されなくなりました。それだけでなく、光害の影響を軽減することにもなりました。ただ、あらかじめダークファイルを準備しておいて、ダーク補正もリアルタイムで行わないと非常にノイジーな画像となってしまいます。まだ試せていませんが、フラット補正も同時に行ったほうが良いようです。こちらも今後の活躍が期待できますが、課題も多いです。
  2. STC Astro Duoナローバンドフィルター *1 *2
    これは、天リフ様の記事ツイッターで拝見して導入を決断しました。私の居住地もなかなかの光害地なので、長年、光害カブリには悩まされてきました。これまでも、IDAS LPS-P2やAstronomik CLSなどを使用してきましたが、画像処理の際に苦労していました。ナローバンドフィルターでの撮影も行っていましたが、手間や時間がかかっていました。この強力なフィルターによって一眼デジカメでの撮影の幅が広がりました。明るく色収差の少ない光学系での撮影が望ましいことや、カラーバランス調整・フラット補正などに工夫が必要ですが、遠征せずに地元でも撮影できることは大きいと感じています。

最後に拙いですが、冷却CMOSカメラの導入当初にLive Stack撮影の試験のために撮影した春の系外銀河(M51 ,M81 ,M82 ,M101)です。 まだダークファイルなどが準備できていなかったので背景が荒れていたり、露光が十分でなかったりします。しかし、これまで撮影を半ばあきらめていた対象が、大量の短時間露光の積み重ねでここまで写ったことに大きな可能性を感じたものでした。

f:id:star-echo:20181224120411j:plain

 

こうしてみてみると、今年はいろいろな機材を導入して、かなり撮影環境が変わりました。年々、居住地の光害がひどくなってきたことや遠征に出かける時間が限られてきたことなどで、天体撮影のモチベーションは低下していましたが、これらの機材のおかげで復活してきました。今年は、試作やレビュー的な撮影・記事が多くなりましたが、来年はこの経験を生かして撮影や作品そのものに力を入れていけたらと思っています。天候に恵まれてほしいものです。

ウィルタネン彗星 + α

12月15日の夜は、ウィルタネン彗星の撮影に行きました。彗星の撮影は、随分前にラヴジョイ彗星を撮った時以来で、きちんと画像処理をしたのは初めてでした。19時半ごろの早い時間から彗星の撮影をしてから、ふたご座~オリオン座が上がってくるまでの間、ぎょしゃ座のIC405 & IC410の撮影を行いました。その後、ふたご座流星群の残り香を撮ろうと思いましたが、赤道儀に同架しておいた広角ズームレンズが結露してしまって、残念ながら撮影できませんでした。当日は、とても寒かったです。

 

f:id:star-echo:20181221182839j:plain●12/15 ウィルタネン彗星(46P/Wirtanen)
 Astro 6D(約-8.0℃冷却)+ NewFD 300mmF2.8L + Astro Duo ナローバンドフィルター
 SXP赤道儀 + M-GENにてオートガイド
 ISO1600 180sec × 27 81min DeepSkyStackerにて彗星基準合成

f:id:star-echo:20181221183758j:plain●12/15 ぎょしゃ座 勾玉星雲IC405 & IC410
 Astro 6D(約-8.0℃冷却)+ NewFD 300mmF2.8L + Astro Duo ナローバンドフィルター
 SXP赤道儀 + M-GENにてオートガイド ISO1600 180sec × 25 75min

どちらもダーク補正なし、フラット補正ありです。ウィルタネン彗星の方は、本当はこのような強力なフィルターを通さずに撮影するべきなのかもしれませんが、長めの露出をしたかったので使用してみました。光害カブリの影響はかなり軽減されましたが、フラット補正やカラーバランスの調整には苦労しました。フラット補正は、RGB各色で微妙に合わないようで、特にRとGはチャンネルごとに補正(ステライメージの周辺減光補正ツールにて)が必要でした。また、やはり恒星像はモノクロカメラによるナローバンド撮影のようなのっぺりとした星像になりがちです。このため、勾玉星雲の方は、デジタル現像を2回行うことで少し自然な恒星像に近づけました。このフィルターは、光害地での撮影に強力な武器となりますが、色々と工夫が必要そうです。NewFD 300mmF2.8Lに関しては、なかなか優秀な星像だと思います。

f:id:star-echo:20181221191518j:plain

f:id:star-echo:20181221191538j:plain当日の夜は、このように結露~凍結するほど寒かったです。同架したタムロンSP15-30mm F2.8レンズにもヒーターを巻いて対策をしていました。前玉はヒーターのおかげで結露しませんでしたが、カメラ交換の際に後玉内部が結露してしまったようです。撮影時にどうしてもピントが合わなくて断念したのですが、翌日に室内で確認するまで原因がわかりませんでした。強力な乾燥剤と一緒にジップロックの中に密閉して室温に置いたら、しばらくして曇りはなくなりました。一度、メンテナンスが必要かもしれません。低温時の結露にはくれぐれも注意しなくてはいけません。

そのようなわけで、ふたご座流星群は肉眼で少し確認できたのみでした。それでも、話題のウィルタネン彗星やぎょしゃ座のにぎやかな領域も初めて撮影できたので、大きな収穫でした。

New FD 300mm F2.8LとSTC Astro Duoナローバンドフィルターでの天体撮影

昨晩は、ようやく晴れてきれいな夜空に恵まれたので、天体撮影に行きました。試してみたかったSTC Astro Duoナローバンドフィルターでの撮影です。また、このような透過光域の狭い、暗いフィルターのために調達したNew FD 300mm F2.8Lの星像も試してみました。
さらに今回は、冷却改造EOS6Dでの撮影でしたが、あえてこれまで使ってきたM-GENでのガイドではなく、ASIAIRでのガイドとしました。ガイドカメラのASI290MM miniをメインカメラにして撮影、Plate SolvingにてSkySafariと同期・アライメントをしたのち、ガイドカメラに設定しなおしてキャリブレーション、ガイドを行いました。このメイン→ガイドのスイッチがうまくいくかどうかを試すのも今回の目的でした。結果として、このような使い方も可能なことがわかりました。

 

f:id:star-echo:20181225122744j:plain
12/10撮影 オリオン座 馬頭星雲~M78~バーナードループの一部
 ASTRO6D + New FD 300mm F2.8L + STC Astro Duoナローバンドフィルター
 ISO1600 3min × 17 総露光時間51分
 自動導入改造AP赤道儀 + ASI290MM mini(75mm Cマウントレンズ)にてオートガイド

New FD 300mm F2.8Lは、30年以上前のレンズですが、さすがにサンニッパだけのことはあって明るくてもシャープだと感じます。フローライトだけあって色収差も少ないと感じます。STC Astro Duoナローバンドフィルターは、RGB各色でピント位置がずれやすいので、軸上色収差の多いレンズではイクラ現象が起きやすいようですが、このレンズではそれも目立ちにくいようです。ただ、このフィルターはやはりカラーバランスを整えるのが難しいです。6Dとの接続は、光映舎のFD→EFアダプターを介して無限遠の合焦を得ています。絞りは使えなくなるので開放F2.8のみとなりますが、カメラ回転も容易で使いやすいアダプターです。

 

f:id:star-echo:20181211214914j:plainNew FD 300mm F2.8LとSTC Astro Duoナローバンドフィルター、冷却改造6Dの組み合わせによるフラット画像です。この画像によってフラット補正を行うとかなりの強調処理にも耐えるようになってくれます。今回もかなりの光害地での撮影でしたが、フィルターによる強力な光害カット効果とフラット補正により、単純なカブリ補正のみで強調処理ができました。

 

f:id:star-echo:20181211220621j:plain

f:id:star-echo:20181211220700p:plain

f:id:star-echo:20181211220723p:plain前回に引き続き、ASIAIRと改造AP赤道儀の組み合わせにて撮影を行いました。ASIAIRとの接続やPlate Solvingによる同期、自動導入はスムーズに行えました。ただ、オートガイドは、まだ安定しない傾向にあります。概ね2秒角以内には収まりますが、突然、パルス状に乱れたり、グラフ外に振れたりします。おそらく、機材の設置画像にあるようにケーブルが多くてバランスが取りにくく、ガイド中にもケーブルが動いたりすることが影響しているようです。キャリブレーションも改善はしましたが、完全には直交しません。このあたりがAP赤道儀の難しいところなのかもしません。ただ、PROMINARとM-GENの組み合わせでは安定していたので、ケーブルの取り回しなどをもう少し工夫すれば改善すると思われます。今後の課題です。


それでも、今回はASIAIRにて、ガイドカメラをメインカメラにして撮影→Plate Solving→同期・アライメント、ガイドカメラに戻してオートガイドというスイッチングが可能なことがわかりました。今後のソフトウェアアップデートで一眼デジカメのコントロールやディザリングにも対応するようになれば、より使い勝手がよくなり、ノイズの少ない画像が撮れるようになると期待しています。

 

ASIAIRでの天体撮影

先週は、久しぶりに夜間、晴れたので天体撮影に行きました。かねてより取り寄せてあったASIAIRでの撮影に初トライしました。
ASIAIRと改造AP赤道儀RS232C-USB接続、SkySafariへのブリッジ機能、Plate Solvingによる同期、冷却CMOS+EFWでの撮影など、一通りのことは試すことができました。

 

まずは、撮影結果から。カシオペア座のハート星雲 IC1805 & 胎児星雲 IC1848です。

f:id:star-echo:20181120182302j:plain

f:id:star-echo:20181120182415j:plain11月15日撮影 ASO(上)、SAO(下)
 SIGMA APO MACRO 150mm F2.8 + ASI1600M Pro  ‐20℃ ZWO社製フィルター
 Hα:O3:S2 =  6枚: 8枚:6枚(各180sec)= 18min:24min:18min Total 60分
 自動導入改造AP赤道儀+ASI290MM mini (50mm Cマウントレンズ)でオートガイド

今回は、ダークファイルの準備が間に合わなかったので、-20℃に冷却することでダーク補正を省きました。ややノイジーですが、まずまずだと感じます。F2.8レンズでの撮影だったので、露光時間の割にはよく写ったと思います。

 

撮影から赤道儀のコントロール、オートガイドまですべてASIAIRから行いましたが、とてもスムーズでした。Wifiで遠隔操作できるので、設置さえしてしまえば車の中で暖房にあたりながらコントロールできて快適でした。

f:id:star-echo:20181120191607j:plain

上の写真は、今回使用したシステムです。撮影用メインカメラのASI1600MM ProにEFWとガイドカメラからのUSBケーブルを集めて、メインカメラからUSBをASIAIRに接続します。また、赤道儀RS232CポートからUSB変換ケーブルでASIAIRに接続します。これまで、Bluetoothスマホと接続していましたが、ASIAIR経由のWifi接続の方が接続や認識はスムーズでした。

f:id:star-echo:20181120192511j:plain

接続の設定は、これまでのSkySafariでの設定と同じく、Meade LX200 Classicです。アライメントやPlate Solving+SkySafari同期をとっていないので、Currentの赤経赤緯の表示はいい加減ですが、実際にアライメントして同期をとる正確に表示されます。

f:id:star-echo:20181120193213j:plain

SkySafari側は、このような感じになります。ASIAIR側のPlate Solevingで同期をとれば、お互いをシンクロさせることができます。Plate Solevingは、撮影した写真から恒星配置パターンを解析して星図上の位置を確定してくれる機能で、とても秀逸です。iPhone7でおおよそ数秒で解析が完了します。解析した後は、赤経赤緯の値が表示され、Sync MountをクリックするとSkySafariに同期されます。この機能のおかげで、アライメント星にレンズをおおよそ向けて、Plate Soleving+同期させた後、ずれを補正すれば写野のほぼ真ん中に基準星が入ってきますので、アライメントがとても楽です。ファインダーはなくてもよいのではないかと思うくらいです。撮影対象の導入も、最初の導入の後、Plate Solevingを行ってずれを補正すれば楽に導入できますし、構図の調整も楽です。

f:id:star-echo:20181120194322j:plain

撮影中の画面は、このようになります。Autorunの機能もあり、フィルターのコントロールもできます。オートガイドは、PHDに似たようなインターフェースで、パラメータの名称も似ているように思いました。今回は、キャリブレーションがあまりうまくいかず、ガイドは荒れてしまいました。M-GENに比べるとキャリブレーションにはかなり時間がかかる印象で、XY軸もなかなか直交してくれませんでした。赤道儀側でのバランス調整など、今後の課題だと思います。

 

f:id:star-echo:20181120195022j:plain

今回は、ガイドシステムを親子亀方式で同架するのが難しかったので、上記のようなクランプ付きスライドレールとデュアルクランプを組み合わせて撮影レンズとガイドカメラを同架しました。レール側のクランプに撮影システム、デュアルクランプ側にガイドシステムを乗せました。デュアルクランプは、裏表にクランプ溝が直交する形で配置してあり、スライドレール上の任意の位置で固定可能なので便利です。同架用のプレートに比べてかなり軽量です。

 

f:id:star-echo:20181120200700j:plain

最近、バッテリーは、このsuaoki S270 40540mAh/150Whを使用しています。小型のポータブルバッテリーで、モバイルバッテリーと同様のセル電池を使用していますが、十分な容量があります。DC5V-USB出力×4(うち1つは、QC3.0A)、DC12V出力×4、AC100Vを備えており、とても便利です。QC3.0Aからの給電でASIAIRは問題なく動作しました(2.1A出力では動作しません)。今回の撮影システム程度であれば、2~3晩くらいは充電なしでも大丈夫そうでした。

150Wh(160Wh以内)なので、2つまで飛行機内に持ち込み可能です。軽量ながら大容量なので、SG-3500LEDなど鉛シール蓄電池のポータブルバッテリーの出番は徐々に減ってしまいそうです。

f:id:star-echo:20181120195925j:plain

f:id:star-echo:20181120195843j:plain

また、このように18V出力の太陽電池でも充電が可能です。写真を撮った日は、薄曇りだったのであまり出力が出ませんでしたが、晴れていれば1.0~2.0A程度は出そうなので(上の写真の太陽電池は60W出力)、継ぎ足し充電であれば実用的と思われます。キャンプなどでの活躍を期待しています。

 

以上のようにASIAIRとAP赤道儀の撮影システムは、軽量省電力で撮影やガイドのコントロールも快適です。また、Plate Solvingもとても秀逸です。今後のアップデートでは、一眼デジカメのコントロールやディザリングも実装されるかもしれません。軽量小型の高性能バッテリーなども含めて撮影システムの軽量化も図れました。以前と比べると本当に天体撮影環境も変わったと感じています。